オリジナルプリントグッズ工房 MAKE ONE

起業家紹介【オリジナルプリントグッズ工房 MAKE ONE 代表 吉田一成さん】

企業内起業で、変革のきっかけをつくりたい。

オリジナルプリントグッズ工房 MAKE ONE



オリジナルプリントグッズ工房 MAKE ONE

カリスマ経営者の孫に生まれて。

──2017年7月、《創業チャレンジショップ》に、『オリジナルプリントグッズ工房MAKE ONE』をオープンした吉田一成(かずしげ)さんは、『株式会社ヨシダコーポレーション』の取締役でもあります。同社は、一成さんの祖父、故吉田末男氏が、1955年に創業した印刷会社(創業時は『吉田写真製版所』)です。末男氏は、弱冠24歳で製版所を起業し、のちに印刷や、印刷機材の販売も手掛け、広告代理店をつくり、最盛期には200人近い社員を擁した立身出世の人。郡山のみならず東北の印刷業界における風雲児であり、カリスマ経営者として知られた存在でした。1990年代、社会システムのIT化が、印刷業界に変革を迫りました。印刷物のデザインから製版までをパソコンで行うDTP(「Desk Top Publishing」の略)が普及し、画像・テキスト情報のデジタル化が始まり、製版部門の縮小をはじめ、省力化が進みました。印刷工程でも多種多様なコンピューター技術を使ったシステム化が行われ、印刷会社は急速に様変わりします。
2011年、吉田末男氏が亡くなりました。業界全体がそうなのですが、『ヨシダコーポレーション』は、今も変革途上にあります。昨年、一成さんは28歳で取締役に就任しました。それは、次期社長の“内定”を意味する取締役就任でした。



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東日本大震災と、祖父の逝去で…。

「祖父の会社は、印刷会社」という程度の認識でした。興味もなく、ましてや、その会社を継ぐ気持ちなど皆無でした。高校時代は、バンドをやっていて、高校卒業後も、東京の音楽専門学校へ進みました。学校は1年で辞めて郡山へ戻ってきたのですが、バンドは続けていました。その頃から、祖父や母に、「会社に入らないか」と言われていました。


──関心がなかった『ヨシダコーポレーション』を継ぐ決心をした動機は?

とくに、これといった直接の動機はありません。“周囲の空気”というか、“何となく”というか…。会社のイベントに顔を出したときなどにも、幹部の人たちから、「次(の社長)は、キミなんだから」とか、「ほかに誰がいるの?」とか言われていましたから。まぁ、音楽では食べていけないだろうし、決心したというより、「やるしかないのだろうな」と…。最初は、栃木にあるグループ会社の『株式会社吉田カラーシステム』へ入社しました。


──『吉田カラーシステム』というのは、どういう会社ですか?

プリ・プレス(印刷の前工程)、つまり製版ですね。それと、印刷をやっている会社です。


──そこで、何をされていたのですか?

営業です。2年後に東日本大震災が起き、もともとガンの治療をしながら頑張っていた祖父の体調が急激に悪化して、8月に亡くなりました。張りつめていた糸が切れたのでしょうね。それで、郡山へ戻って、『ヨシダコーポレーション』へ入りました。



いきなりの取締役就任も想定内?

──グループ会社とはいえ、『吉田カラーシステム』と、『ヨシダコーポレーション』とでは、会社の規模が全く違います。「そう遠くない将来、この会社の社長になるのか」と思うと、腰が引けませんでしたか?

そう、全く違いました。でも、あまり悩まない性格なんです(笑)。いろいろ大変なんだろうが、とりあえず目の前の課題に取り組んでいくしかないと…」


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──やはり、最初は営業を?

いえ、印刷のオペレーターです。最初はオンデマンド(少部数)印刷プリンター、次が大判出力。そして、オフセットを担当していた昨年、取締役になりました。


──いくつかの昇進を経ての取締役就任だったのですか?

いえ、無役からいきなりです(笑)。


──戸惑いはありませんでしたか?

現場は、ひと通り経験しましたが、会社も、現場での昇進を考えていたわけではないと思います。「現場のスペシャリストをめざす」というより、「現場を知っておく」というスタンスでした。とはいえ、いきなり取締役となると、戸惑いが全くなかったと言えばウソになります。周囲が自分よりずっと年上のベテラン社員ばかりの取締役というのは、やりにくいものです。最初は、落ち着いて見えるように眼鏡を掛けてみたり…(笑)でも、『福島県中小企業家同友会』や、『郡山商工会議所青年部(郡山YEG)』で知り合った人たちに、「もっと、ありのままの自分を出したほうがよい」と言われたりして、自分も「やっぱり、そうだよな」と思いました。祖父が亡くなる1年前から、母が社長を務めているのですが、65歳までとか言っているので、今からだと、あと6年です。実際には、もっと早くなりそうな気がしています。



取締役としての初仕事は、企業内起業。

──《創業チャレンジショップ》出店のきっかけは?

昨年、営業次長の発案で、タペストリーや壁紙(大判出力)とか、Tシャツとか、缶バッジのオリジナル・プリントをやることになり、機械を導入しました。最初は、B to B(企業間取引)を想定していたのですが、それぞれB to C(一般消費者向け)もいけるのではと…。しかし、一般のお客様が、工業団地の中にある我が社に足を運んでくださるとは思えません。やる以上、街なかにショップをつくる必要があります。あれこれ検討していたとき、常務が《創業チャレンジショップ》の話を持ち帰ってきたのです。『郡山商工会議所』さんからも、「もし出店するのであれば、早く決めてほしい」というご要請があり、具体的な計画のないまま、とりあえず出店することだけを決めたのですが、オープンまで2カ月を切っていました。


──取締役としての初仕事が、企業内起業ですね。

会社として、このショップをもって“変革”というつもりはありませんが、蟻の一穴というか、きっかけになればとは思っています。しかし、いざ出店してみると、さまざまな課題が待ち受けていました。まず、タペストリー、壁紙、Tシャツ、缶バッジだけでは、ショップとしてのバラエティー感がいまひとつでした。「もっと扱い品目を増やさなければ」ということで、とりあえずマグ・カップ・プリントの機械を導入しました。もちろん、アイテムとしては、まだまだ充分ではないので、革製品へのオリジナル刻印とか、ホテルや結構式場と提携して結婚式の記念品とか、いろいろ検討しています。



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“発進力”が決め手になる1年間。

──オープンしたばかりですが、感触としては、いかがですが?

《創業チャレンジショップ》のおかげで、早々と“街なかのショップ”が実現しました。しかし、それだけでは、たとえ駅前大通りという好立地でも、成果にはつながらないでしょう。オープンしてみて、そのことを改めて実感しています。《創業チャレンジショップ》は、原則として1年契約です。その1年間で、次のステッ プへ進めるかどうかが決まります。あっという間だと思います。安閑としてはいられません。何はともあれ、『MAKE ONE』の存在そのものと、『MAKE ONE』ならではの魅力を発信しなければなりません。その“発信力”がすべてでしょうね。


──『MAKE ONE』ならではの魅力とは?

「まず、小ロットへの対応です。Tシャツ1枚、マグカップ1個から、リーズナブルな価格でオリジナル・デザインを提供します。そして、小さなショップですが、企業内起業の強みがあります。デザイン、品質、納期、価格など、すべての面で組織力を活かしてユーザビリティーを徹底できるのは、[MAKE ONE]ならで はの強みです。


──“発信力”とおっしゃいましたが、具体的には?

ホームページ、SNS、地元紙やフリー・ペーパーへのニュース・リリースなど、発信する手段は色々あります。『ヨシダコーポレーション』の営業ネットワークを活用することもできます。しかし、どう発信するかより、何を発信するかが先決です。「オリジナル・プリンントのグッズという“モノ”があるショップ」というだけでなく、「行ってみたくなる“コト”があるショップ」を発信のメイン・コンテンツにしたいと考えています。



オリジナルプリントグッズ工房 MAKE ONE

『MAKE ONE』のブランド化も視野に。

──いま、何か計画していることはありますか?

あるプロ・スポーツ・チームのオリジナル・グッズを企画・製作・販売する話を進めています。そのチームの既存のグッズを置かせてもらうのではなく、[MAKE ONE]で企画・製作するグッズを、チームにロイヤリティーを支払って販売する──それは、チームのグッズであると同時に、[MAKE ONE]ブランドのグッズでもあるわけです。『MAKE ONE』ブランドという意味では、他のグッズも同様で、このショップにあるものすべてが、『MAKE ONE』ブランドであるという気概をもって、他のショップにはない付加価値を提供していきたいです。



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復興というより、変革へのチャレンジ。

──最後にお尋ねします。一成さんの個人的な実感として、復興は進んでいますか?

郡山に限らず、東北の多くの自治体は、東日本大震災がなくても、衰退傾向にありました。めざすべきは、震災や原発事故からの復興というより、変革です。『福島県中小企業家同友会』や、『郡山商工会議所青年部』には、連帯して、この街の変革にチャレンジしたいと考えている次代の経営者が大勢います。皆さん、郡山を愛しておられます。私も、そんな先輩たちについていき、変革の一端を担えたらと願っていますが、まずは足元の『MAKE ONE』、そして『ヨシダコーポレーション』で、私なりのチャレンジをしたいと思っています。



オリジナルプリントグッズ工房 MAKE ONE

福島県郡山市中町 10-6 チャレンジショップ内

TEL.070-2015-8192

makeone@gmail.com

吉田一成

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